嗅覚の力を科学する

第20回アロマ・サイエンス・フォーラムに参加しました。大学の先生方や香料会社の方々がたくさん出席されていました。香りの研究はエビデンスがないと言われがちですが、毎年190程の成果が出ているそうです。形がない香りの世界、「香りが人の生活を豊かにして健康にも役立つのか」この永遠のテーマに、形のある研究成果として進んでいることは喜ばしいことです。

何回かに分けてエッセンスだけになりますが備忘録として残します。

嗅覚の力を科学する 〜東京大学大学院農学生命科学研究科 東原先生より

嗅覚研究で非常に有名で一度お話をお伺いしたいと思っていた東原先生のお話を今回伺うことができました。

AEAJ「アロマの現場」の記事も分かりやすく今回の内容に近いです。

多くの動物にとって、匂いを感じる嗅覚は、生きて種を存続していくために必須のものであるにも関わらず、人間にとっての嗅覚は、五感の中でもなくてもいい感覚といわれがち。しかし、料理を美味しく食べる、季節の移ろいを感じるなど嗅覚は生活のQOLに大きく影響する。

嗅覚はなくていいのか?と言われれば悪臭はQOLを下げる、悪臭がどれくらいストレスに影響を与えるかも最近は明らかになってきているそうです。

興味深かったのは、嗅覚を完全に失うと他の疾病より死亡率が高いということ。嗅覚は無意識のうちに身体の安定性に寄与している。五感をバランスよく使うことが大切ですね。

匂い物質とは?生物の代謝から生じるもの。二次代謝経路→それぞれの生物種に特有の代謝経路がある。空間に匂いがするということは生物がいるということ、カビ臭いなら微生物がいる。

生きとし生けるものは代謝により体臭も変化する。この体臭は成長段階に応じて匂いが変わっていく。赤ちゃんのにお匂いと思春期の人の匂いは違うし、病気になった時の体臭は変わる。代謝が変わると匂いも変わるということは匂いは体調のバロメーターにもなるということ。

また、香りの感じ方は他の感覚と比べると人によって感じ方が違う、ということも大きな特徴。脳はたくさんある匂いの中から組み合わせて香りを感じている。

香り物質(数十万種類以上)→ 嗅覚受容体(約398種類)→受容体の多型による個人差がある。人間は約400種類の嗅覚受容体を持っているがアフリカ象は4000種類の受容体を持っているとか。象は鼻がいいんですね。その鼻の良さは、象を狩る民族と象を狩らない民族を嗅ぎ分けられるそう。

同じ匂いでも情報の与え方によって変わる、という例も面白く、イソ吉草酸(足の裏の匂い)+バニリンを加えるとなんとチョコの匂いに!

香りに関するサービスは、個人差が激しいが故に皆同じ香りではなく、よりパーソナルな「私にベストの香り」というものがこれから求められるとか。大切な人の香りの保存、旅の記憶など香りにして残すこともこれからはあるのかもしれません。

私だけのオリジナル香水サービスはこれから求めれるサービスだと思いました。